ある調査によると、夫の仕事について「どちらかといえば聞かない・会話しない」と答えた妻は71.5%。残りの28.5%は「ほとんど聞かない・会話しない」という結果が出た。つまり、100%の妻が夫と仕事の話をしないということ。

私は、これが不思議でならない。夫がどんな仕事をしているのか、気にならないのか。もっとも大切な人であるはずの夫のことをもっと知りたいとは思わないのか。

恋人同士の時期なら、どんなことでもいいから、相手のことを知っておきたいと望むものだが、結婚してしまうと興味が薄れるということなのか。

だが、愛しているのなら、「仕事で辛い思いをしていないだろうか」「人間関係で悩んでいないだろうか」と、気になるものだと思う。

話を聞かない理由のトップが、「夫が仕事について何も話してこないから」となっている。すなわち、妻は聞きたいとも思っていないということである。

夫側の話さない理由としては、「休みの日に仕事の話はしたくない」や「話してもわからない」などが推測される。

互いが、一歩離れた場所から、牽制し合っているように見える。遠慮なのか、面倒だと思っているのか。

この距離感は、いったいどこから生まれてしまったのか。理由として考えられるのは、一緒にいる時間の長さではないか。

恋人同士でいる間は、会う時間が限られているので、その時間内でめいっぱい話をしようとする。だが、結婚してしまうと、最初のうちはいろんなことを話すのだが、年数が経つごとに話すことがなくなる。そのうち、話そうと思ったことでも「いつでも話せる」という思いから、徐々に話さなくなる。

仕事の話以前に、会話するという習慣がなくなってしまうのである。一度途絶えてしまうと、元に戻ることは容易ではない。

ここに、夫婦ならではの悪い点がある。「夫婦なんだから、いまさら…」と、会話する努力を怠ってしまう。照れくささや面倒さがあるのだろうが、会話の大切さに気づいていない。

「黙っていても、心は通じ合っている」などという夫婦は、「男は黙って…」という時代の、しかもごく少数派である。そんな夫婦が多ければ、離婚率は上昇していない。

いろんなことを話し合ってこそ、互いを理解することができる。悲しいことも、辛いことも、困難なことも、ふたりで話し合って始めて、解決することができるのである。

互いがひとりで抱え込んで、夫が、妻がわかってくれないと、イライラを募らせるのである。意見が違っていても、話し合うから道が拓けるのであって、話をしなければ、平行線のまま、いつまで経っても交わることはない。

長年一緒にいて、話すことがなくなってきたのなら、まずは仕事の話をすれば良い。仕事の話が大事なのではなく、キッカケのひとつである。話は、何でも良い。

1日のほとんどを会社で過ごす夫にとって、一番話しやすいのが仕事の話である。仕事の話から始めて、脱線しながら楽しく笑えれば、それで良いのである。

夫婦間でもっとも大切なものは「会話」だ、と私は思っている。

小学生と先生が心を通わせる「あのね帳」のように、今日1日あったこと、感じたこと、何でもいいから、「ねぇねぇ、あのね…」と、互いが話し掛ければ良いのである。そうすれば、夫婦の冷めた距離感などなくなってしまうだろう。


■人気ランキングに参加しています。
 1クリックをお願いします。


社会・政治問題ランキング