幼稚園年長組の夏休みから始まる、ランドセルの売り込み合戦。夏休みに祖父母からプレゼントしてもらうことを前提にした、新しい販売戦略である。

孫のためなら高額な出費もいとわない祖父母を狙い、年々高級なランドセルが登場している。

色は黒と赤しかなく、何のデザイン性もなかったランドセルが、素材や色も多彩になり、「お洒落」「可愛い」「カッコいい」ものが、たくさん出ている。

職人が手縫いするものやオーダーメイドまで出現している。

特に女子児童を意識し、まさに“ファッションアイテム”とも言える、キラキラと眩しいランドセルが増えている。

6歳児と言えども、女心・乙女心が芽生えているので、誰よりも可愛い、友だちよりもお洒落なランドセルを欲しがるのは当然である。

ランドセル業界としては、“してやったり”と笑みを浮かべていることだろう。

金を持っている祖父母が、孫のために金をどんどん使うことは、日本経済にとってもプラスではある。喜んで金を使う人がいて、買ってもらって喜ぶ子どもがいる。いいこと尽くめのように思える。

だが、その陰で辛い思いをしている子どもたちがいることを知って欲しい。

「子どもの貧困」という言葉は知っているだろう。

親の事情により家庭が貧しく、最低限の生活を強いられ、必要なもの以外は何ひとつ買ってもらえない子どもたちである。

子どもの貧困率は、やや古いデータだが、2015年で13.9%。7人に1人が貧困なのである。

そんな家庭では、ごく普通のランドセルさえ、高額で買えないこともある。なのに、まわりではお洒落で可愛いランドセルを買ってもらって、喜んでいる友だちがいる。

「社会とはそういうものだ」で済ませることはできない。

中高生にもなれば、現実を受け止めることもできるだろうが、たった6歳の子どもには、あまりにも過酷な試練ではないか。

小学校は義務教育である。みんなが平等に学校へ通うことができる。

ならば、条件も平等であるべきではないか。金持ちの子どもも貧乏な家庭の子どもも、同じスタートラインに立つ。

「たかが持ち物の違いなど、教育には関係ない」と言う人もいるかもしれないが、子どもは社会の格差を肌で感じとり、少なからず傷ついている。

小学1年生に、そんな重荷を背負わせるのは、あまりにも悲しい。

できれば、昔ながらの「黒と赤」もしくは「鞄は自由」という流れになることを願う。


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